はじめに
「サイドチェンジ」という技がある。隣のポケモンと場所を入れ替える効果を持つ。現在(第8世代、鎧の孤島発売直前)はダブルバトルで使われ、サマヨールやロトムなどが相手の技をひょいひょい躱して(受け止めて)いる。
このゆびとまれとは異なり、サイドチェンジは読めば実質無効化できる余地がある。これにより互いにサイドチェンジするかしないかの読み合いが発生するため、対戦環境をいっそう混沌とさせている。
サイドチェンジが広く認知されたのは前作ウルトラサンムーンだが、それ以前にも技そのものは実は存在した。覚えられるポケモンや効果は現在と昔ではかなり異なり面白かったので、本記事ではこれを取り上げることにした。
第5世代
トリプルバトルとともにサイドチェンジは産声を上げた。技マシン51。
効果
ダブルバトルなら互いの位置を入れ替える今と同じ効果。トリプルバトルなら両端にいるポケモンしか使えず、もう片方の端のポケモンとの位置を入れ替える。当時の優先度は+2ではなく+1。
トリプルバトルには「端」という概念が存在する(らしい、筆者は未経験)。ポケモンが3体横並びになるのだが、その端から端への攻撃は基本的に届かない(波動技と飛行技が例外)。ポケモンを端から端まで動かすのも面倒(2手)だったはず。
ところがサイドチェンジを使うと優先度1で1手で移動できるので、端からの奇襲に使える。
…とはいえ使ううえで制約もある(反対端のポケモンが目の前に単体技を打っていると失敗扱いになる)ためだろうか、「トリプルバトル サイドチェンジ」で検索してもあまり多くはヒットしない。
覚えるポケモン
当時は技マシンでの習得がほとんど。習得者は20種以下と少なく、エスパータイプのなかでもエスパーのイメージが特に強いポケモンが多い。
フーディン族、ミュウ、ネイティオ族、ドーブル、サーナイトエルレイド族、ネンドール族、デオキシス、オーベム族。
ユンゲラーとフーディンのみレベルで習得。最も超能力のイメージが強いため自己習得できたのだろうか。
第6世代
サイドチェンジの技マシンが消滅した代わりにタマゴ技になった。
効果
第5世代と同じ。
覚えるポケモン
ここからエスパーとは関係ないポケモンも習得し始めた。合計は25種程度。
・エスパー軍団(下線は新規習得、以下同じ)
フーディン族、ネイティオ族、ドーブル、サーナイトエルレイド族、オーベム族、フーパ。
特にフーパは色々な空間と行き来できるイメージがあるのでサイドチェンジにぴったり。ミュウ・ネンドール族・デオキシスはタマゴを産めないためカロスマーク付き個体からは没収。
・ゴーストタイプ
後の第7世代でサイドチェンジが多くのゴーストタイプに配られるが、デスマスとデスカーンはその先駆けのような存在。
・横方向に俊敏なやつ
明らかに超能力ではない手段で横に移動している。
象徴的なのがキングラー。蟹は横に歩くので横に移動させてやりたいというシンプルな思いからだろうか。ルチャブルとコジョンドは格闘タイプの中でも特に身軽なので横にも軽やかに移動できそう。
ギャロップは俊敏ではあるが横に俊敏かと言われると微妙。モチーフの馬は縦の移動に比べ横への動きが苦手。競馬等で少し横に動いてレースを優位に進めるとか、大幅に横にヨレてしまうとかがモチーフなのだろうか。
「馬 サイドチェンジ」で検索するとサイドチェンジという名前の実在の競走馬がヒットする。
・遺伝要員?
アーケオスのタマゴグループは「飛行・水中3」。余程キングラーにタマゴ技としてサイドチェンジを覚えさせたかったのか。
・第7世代1年目(サンムーン)
トリプルバトルが消滅してしまった。
効果
ダブルバトルでのみ使われるようになった。また優先度が+1から+2へ上昇するという地味な強化も受けた。今思い返すとウルトラサンムーンへの伏線だったのかも。
また第7世代のシステムには「Z技」というものがあった。補助技を「Z技」化すると技ごとに様々な効果が追加されるが、サイドチェンジは「自分のSを2段階上昇させる」だった。上昇幅が1段階の補助技が多い中では割と恵まれていた。
覚えるポケモン
第6世代と同じ。
・第7世代2・3年目(ウルトラサンムーン)
ウルトラサンムーン発売時のキャッチコピーは「もはやここはキミの知っているアローラではない。」
サイドチェンジについても、教え技化された結果キミの知っているアローラではなくなってしまった。
効果
サンムーンと同じ。
覚えるポケモン
教え技になった途端に大量のポケモンが突如として横に移動し始めた。計140種以上。それまでの5倍。明らかに多い。
・エスパー軍団
アローラライチュウ、フーディン族、スリーパー族、スターミー、バリヤード族、ルージュラ、ミュウ(復帰)、ネイティオ族、エーフィ、ヤドキング、ドーブル、キリンリキ、セレビィ、サーナイトエルレイド族、ブーピッグ族、ルナトーンソルロック、ネンドール族(復帰)、チリーン族、メタングメタグロス、ラティアスラティオス、デオキシス(復帰)、ジラーチ、ドータクン族、ユクシーアグノムエムリット、クレセリア、ムシャーナ族、ココロモリ族、ゴチルゼル族、ランクルス族、オーベム族、メロエッタ、テールナーとマフォクシー、ニャオニクス族、カラマネロ族、フーパ、ヤレユータン、ハギギシリ、カプ・テテフ、ネクロズマ。
多い。エスパータイプなら特に理由が無ければデフォルトでこの技を覚えられるといっても良さそう(後述)。
これまでは純粋なエスパータイプが中心だったが、アローラライチュウやスターミーといった進化後にエスパーが付くポケモンも覚えられるようになった。マフォクシーだけでなくテールナーも覚えるのが目につく。
実戦では主に固いポケモン(クレセリア)が相方を守るためにサイドチェンジしていた。S操作に乏しいカプ・テテフがZ技として用いていたのも印象的。JCSの配信卓に映っていたはず。
・ゴースト軍団
ゲンガー族、アローラガラガラ、ムウマージ族、ヌケニン、ヤミラミ、ジュペッタ族、ヨノワール族、ユキメノコ、フワライド族、ミカルゲ、ロトム、デスカーン族、シャンデラ族、ゴルーグ族、オーロット族、パンプジン族、ダダリン。
エスパーだけでなく、超自然的な力を使って動いているであろうオバケたちも覚えるようになった。さすがにミミッキュにはゲームバランス的に配られなかったか。
ヌケニンがすごい数のタイプを無効化するので、主にGSルールで使われていた。一般的なカイオーガやゼルネアスを完封できる。
・妖精軍団
プリンとプクリン、ラッキーとハピナス、タブンネ、フラージェス族、フレフワン族、デデンネ、メレシー、アブリボン族、キュワワー。
エスパーやゴーストだけでなく、超自然的な力を使って動いているであろう妖精たちも覚えるようになった。
こちらはエスパータイプとは異なりばらまかれてはいない。後からフェアリータイプがついたポケモンのうちマリルリやクチート、進化でフェアリーになったニンフィアは覚えない。
一方で同じ後付けフェアリーでもプクリンやタブンネ、そもそもフェアリーではないラッキーは覚える。モチーフが癒しそのもの、または癒しのニュアンスが含まれていると覚えるのかもしれない。
6世代以降の正統派フェアリーだとモチーフ縛りは比較的緩く、電気ネズミだろうが中世のペストマスクだろうがOK。お菓子(ペロリーム族)はダメらしい。
フェアリーの赤ん坊は覚えない。
・磁気的な力を操るポケモン
アローラゴローンとアローラゴローニャ、ポリゴンZ族、フォレトス、ジバコイル、ダイノーズ、ギギアルとギギギアル、バイバニラ族、ゲノセクト、ウツロイド、ツンデツンデ。
エスパー・ゴーストやフェアリーだけでなく、超自然的な力を使って動いているであろう機械や鉱石たちも覚えるようになった。
岩・鋼タイプの一部、中でもでんじふゆうが似合いそうなポケモンたちがよく覚える。
ポリゴンZ族も機械繋がりでギギギアルと同じここのグループ。バイバニラ族が異質に見えるが実はでんじふゆうを覚える。
一方電気タイプはあまりサイドチェンジを覚えない。
ピカチュウなど一般的な電気ポケモンには俊敏なイメージがあるが、彼らの多くは高速で電気を放てるものの移動するときは自分の手足や羽などで動いている。
これらに対し、ダイノーズやジバコイルなどは電磁気力そのもので動いていると思われる。
このように「目に見えない力で移動しているかどうか」がサイドチェンジを覚える際の基準になっているのではないだろうか。
余談だがこのグループのポケモンにとってサイドチェンジは高等技術なのだろうか、レアコイルやノズパスなど一部の進化前は覚えない。
・横方向に俊敏なやつ
ギャロップ族、キングラー族、ゼブライカ、コジョンド族、ルチャブル。
このグループはあまり新規追加が無く第6世代の遺産感がある。ゼブライカは馬なのでここ。明らかに目に見える力(足)で移動しているポケモンばかり。
・不明
ゴミのみのが一応鋼タイプ。アローラゴローニャが爆発した後の破片でも取り込んだのだろうか。
キングラーはタマゴに頼らずとも習得できるようになってしまった。
先ほど「電気タイプでも自分の足で動くポケモンは覚えない」と言ったばかり。困る。念のため「エリマキトカゲ 横歩き」でGoogle検索したものの学術記事を勧められ、何故か「実践マーケティング戦略」なる書籍を案内されてしまった。困る。
ウルトラビーストだし既存の法則に当てはまらないことぐらいある。べベノムは覚えない。
第8世代(鎧の孤島発売直前)
技マシン→タマゴ技→教え技ときて今作では技レコ―ドになった。
またZ技が廃止され、新たにダイマックスが導入された。ダイマックス中は補助技は全て「ダイウォール」(ダイマックス技も無効化するまもる)になる。戦術的な広がりは薄いが、サイドチェンジとまもるを両立する必要が薄くなり、技スペースに余裕ができるかも。
効果
第7世代と同じ。
覚えるポケモン
没収されたポケモンはいないので、新しく覚えたポケモンのみ記載。
・エスパー
ガラルギャロップ族、バリコオル族(レベル)、ミュウツー、ランクルス族(レベル)、レドームシとイオルブ、イエッサン。
ランクルスが技レコ―ドではなくレベルで習得。5世代当時は技マシンでも覚えなかったが、当時から覚えた同期のオーベムを差し置いて抜擢された。バリコオルもモチーフがタップダンスゆえに横に動きやすそう。
・ゴースト
ポットデス族、ドロンチとドラパルト。
ドラメシヤは覚えない。
・妖精
ピッピとピクシー、トゲキッス。
プクリンやラッキーが覚えるならピクシーやトゲキッスも覚えていいだろう感は元からあったのだが、無事習得。
ピィ、トゲピー、トゲチックは覚えない。トゲチックが赤ん坊扱いされている。
・横方向に俊敏なやつ
まずはエースバーン。「サイドチェンジ」でgoogle検索するとポケモンと馬の次にサッカーの記事がヒットするので、サッカーモチーフならそりゃ覚えるという感じ。
そしてダグトリオが新たに習得。アローラダグトリオはサイドチェンジで有名なアローラ出身にもかかわらず、ガラルに来ないとサイドチェンジできないという変わり種。
俊敏なイメージもある。横に動くというよりは、横方向に3体もいるのが特徴的。高速でサイド(横の2体)がチェンジしているイメージだろうか…
・3体横に並ぶ
・サイドチェンジで両端の2体が位置を入れ替えていると思われる
…これは実質トリプルバトルでは?
サイドチェンジまとめ
・トリプルバトルと共に生まれ、トリプルバトル消滅を尻目に広く普及した
・目にみえない力で移動するポケモンor明らかに横移動が得意そうなポケモンが覚える傾向にある
・ダグトリオをサイドチェンジさせることでトリプルバトルを思い起こすことができる
おまけ
「サイドチェンジを覚えないエスパータイプ」も実は存在する。
・技をそもそもあまり覚えない
・赤ん坊
・鈍重そうなポケモン
ヤドキングは覚える。ブリムオンは果たしてこの枠でいいのか…?
・不明(一般ポケモン)
滅茶苦茶意外なメンバー。身軽そうだしエスパーとしても問題なさそうだし。特にシンボラーは実戦でも存在しないサイドチェンジを警戒した人がある程度存在しそう。
・一部の伝説(と幻)
伝説のポケモンには、かつては相手を生かすような補助技をあまり覚えない印象があった(例えばアローラでは伝説はだれもてだすけを覚えない)。
当然サイドチェンジも覚えない、と思いきや、ネクロズマは覚える。ミュウツーに至っては第8世代で新規習得した。
何故だろう…と思っていたがこれは認識の方が間違いで、実はガラルでは解禁伝説のうちミュウツー以外の全伝説がてだすけを習得していた。
伝説といえど他のポケモンのサポートにも回る時代が来たようだ。今は覚えられないソルガレオやルナアーラもそのうち習得するかもしれない。ミュウツーの挙動不審具合が気になるが。
ビクティニはほのおタイプの印象が強すぎて、エスパータイプであることを忘れられている可能性がある。