構築の経緯
相手を上から殴りたい。
比較的有名なコンボに「ニャオニクスの悪戯スキスワ→モロバレルの悪戯キノコのほうし」で優先度+1で有無を言わさず相手を寝かせるものがある。
妨害性能はピカイチだが、ニャオニクスとモロバレルでは攻撃性能が低いという問題もある。
折角なら悪戯心スキスワから圧をかけたい。上から殴りたい。
悪戯心は変化技のみ適用なので通常は殴れないが、例外的な技に「しぜんのちから」がある。
しぜんのちから自体は変化技だが、技が成功した直後にトライアタック・10まんボルト・サイコキネシス・エナジーボール・ムーンフォースのいずれかで相手を攻撃できる(出る技はフィールドの状態によって変わる)。
そしてあくまで変化技なので悪戯心の発動条件を満たす。優先度1で上から殴れるのだ。
ただし優先度1以上の攻撃技は他にもある。「フィールド展開時に限り優先度1で強力な技」という条件でもゴリランダーのグラススライダーが該当。それより強力なしぜんのちから使いを探さなければならない。
ゴリラよりゴリラなスライダーができるポケモンは果たして...
いた。
ミストフィールド下ならしぜんのちからムーンフォースがタイプ一致の優先度+1で打てる。いわゆる鹿スライダーである。ゼルネアスの採用が確定。
次に悪戯心をスキスワするポケモンが必要だが、これはニャオニクスしかいないので採用。
最後にミストフィールド要員が欲しいが、ゼルネアスのダイフェアリーでフィールドを貼ればこの枠に別のポケモンを使わなくて済む。ギミックは軽い方がいい。
ゼルネアス・ニャオニクスまで確定。
3体目はS操作要員が欲しい。ゼルネアスはジオコントロールで上をとれるので、今回はこれとは差別化したい。
そこでトリックルーム。トリル下でダイマゼルネが下から暴れ、トリルが切れても悪戯心しぜんのちからミストフィールドムーンフォースで相手の上を取り続ける。
となるとトリル後のムーンフォースは可能な限り高火力にしないと相手を上から縛れないので、ゼルネアスの持ち物は弱点保険に決定。
よって3体目は、トリルを使った後にゼルネアスを味方殴りするポケモンになる。
味方殴りする技は全体技が望ましく(相手の指に吸われないしタスキ削りにもなる)、フェアリーに弱点の全体技はヘドロウェーブのみ。これとトリルを両立するポケモンは9体で、ねこだまし耐性まで考えるとゲンガー族かブルンゲル族が適任。
......最もまっとうな選択肢はブルンゲルだが、果たしてそれでいいのか?トリルが相手に読まれないか?
ゼルネアスのS種族値は99とかなり高く、トリルを読まれて中速のポケモンで固められると下を取られてしまう。
しかし高速ポケモン+ゼルネアスなら、追い風などのS操作を誘発できトリル下で先手を取れるようになる。
よって今回はゲンガーを採用。ゲンガーとゼルネアスの並びからトリルで奇襲し、弱保ダイマゼルネが暴れてゲンガーは退場。トリルとダイマが切れたらニャオニクスでスキスワし、鹿スライダーして(悪戯心しぜんのちからミストフィールドゼルネアスで優先度+1ムーンフォースで上を取り続けて)勝つ。
C種族値130もあるゲンガーのヘドロウェーブ味方殴りがめちゃくちゃ痛いという別の問題も発生しているが、実際どのくらい影響があるかはやってみないとわからないので、やってみた。
ゼルネアス・ニャオニクス・ゲンガーまで確定。
4体目は便利枠。トリル・非トリル下のどちらでもゼルネアスに先行して弱保を起動できるバレットパンチ使いを採用したい。中でもゼルネアスの苦手な鋼タイプに打点があり、猫だましや威嚇も便利なカポエラーを採用。
5枠目はゼルネアス以外のトリルアタッカーとして、こちらも相手の鋼タイプに打点のあるコータスを採用。
6体目はトリルが終わった後に悪戯ゼルネアスと一緒に相手の上を取る高速アタッカーが良い。先述の通り初手の追い風も誘発したいのでとにかく速いポケモンが望ましく、レジエレキを採用し、構築が完成。
今回ばかりはやや怪しい構築でいきなりマスボ級3桁順位に持ち込むのは気が引けたので、ビギナー級のサブロムで回してマスター昇格を目標とした。
個別解説
ゼルネアス
持ち物:じゃくてんほけん
特性:フェアリーオーラ
調整:HC252B4 冷静 S個体値V
技:しぜんのちから/マジカルシャイン/まもる/かみなり
ムンフォもジオコンも無い怪しいゼルネアス。Sは最遅ゲンガーや最遅ニャオニクスよりは速い冷静SVとした。
初手はゲンガーと並べてまもる+トリルを押す。ゼルネアス自体がめちゃくちゃ警戒されて狙われる=このゆび状態になると予想。トリル要員の隣でまもるだけでサポートになるはず。
トリル下では弱保エースとしてダイフェアリーを振り回す。弱保ダイフェアリーがかなり法外な火力で、
・HD特化ガオガエンを余裕の確定1発
・H振りヒートロトムを高乱数1発
・無振りアローラガラガラを壁込みで高乱数1発
ゼルネアスの手助けダイフェアリー、訳のわからない火力が出るので好き #ポケモン剣盾 #NintendoSwitch pic.twitter.com/Z9OOjti2rF
— colon_pip (@SemColon) 2021年11月28日
相性を考えないで済むのでとても使いやすい。
トリルとダイマが終わったら鹿スライダー...なのだが、実はターン数がシビア。
初手:ゼルネまもる+ゲンガートリル
2ターン目:ゼルネ弱保ダイフェアリー 残りミストフィールド4ターン トリル3ターン
3-5ターン目:ゼルネ攻撃 残りミストフィールド1ターン トリル終了
6ターン目:ニャオニクススキスワ ゼルネ鹿スライダー ミストフィールド終了
1ターンしか鹿スライダーできない。一体どうすれば...?
ということでかみなりを採用。ダイサンダー/ダイフェアリー併用でフィールドを張り替えると、ターン数がリセットされてフィールドが切れるのが遅くなり、より長いターンギミックできる。
ちなみに10まんボルトではなくかみなりなのは、せめてものザシアンへの抵抗。弱保かみなりダイサンダーなら無振りザシアンを62.5%で倒せるので、命中より火力が欲しい。
ザシアンを先にちょっと削っておくと安心だが、そんな余裕はないことも多い。
ゲンガー
持ち物:きあいのタスキ
特性:のろわれボディ
調整:のんきHB252 D4 最遅
技:ヘドロウェーブ/シャドーボール/トリックルーム/サイドチェンジ
高速ポケモンに見えるトリル要員。
・ゼルネのサポートを受けてトリル展開
・ヘドロウェーブでゼルネをなぐる
・サイドチェンジでゼルネをまもる
が仕事。
C無振りでも実数値が150もあり、そこから放たれるヘドロウェーブはダブルダメージでも威力絶大。
ゲンガーの味方殴りヘドロウェーブのここが強い!:相手を破壊する
— colon_pip (@SemColon) 2021年11月28日
ここが弱い!:味方を破壊する
#ポケモン剣盾 #NintendoSwitch pic.twitter.com/h3L7Wg0fiH
相手の非タスキエルフーンはD1段階上昇でもワンパンする。味方ダイマゼルネアスにも1/4くらい入る。ダイマゼルネに噓泣きされて半分持っていかれた試合もある。味方に。
実際ダイマゼルネが1/4削れてもあまり気にはならないが、急所に当たったり毒が入ったりするとちょっときつい。
相手へのダメージも偉いが、一番削りたいザシアンに無効化されるのが辛かった。
のろわれボディは派手に強い。相手のバークアウトを縛ったり、サイドチェンジと合わせてきょじゅうざんからゼルネを守りつつ縛ったりできる。
持ち物:ナモのみ
特性:いたずらごころ
調整:のんきHB252 D4 最遅
技:スキルスワップ/てだすけ/トリックルーム/アイアンテール
トリルが切れた後ゼルネアスにスキルスワップして鹿スライダーのおぜん立てをする。スキスワしてもニャオニクス側にフェアリーオーラが残るのがいい感じ。
ゲンガーがトリルやゼルネ殴りを完遂できるとは限らないので、ニャオニクスにもトリルとゼルネ殴り用のアイアンテールを採用。
このアイアンテールが曲者で、威力100・命中75・3割防御ダウンというおよそ味方殴りには向かない代物だが、ニャオニクスがゼルネアスの弱点を突ける技はこれしかないので採用せざるを得ない。
実際使ってみたところ一番厳しかったのは命中75で、
味方ゼルネに外して負ける
外しを怖がって手助けしたら火力が足りず負ける
ミリ残しザシアンを倒せたかもしれないチャンスで外して負ける
など。威力100と3割防御ダウンは思ったほどは気にならなかった。
一度アクセルロックで拘ったハチマキルガルガンとの1on1を制した。やはりアイアンテールは相手に打った方がいい技である。
持ち物:しろいハーブ
特性:いかく
調整:意地HA252B4
一般的なカポエラー。ゼルネアスと相性が良いバレパン使いとして採用。対トリパではゼルネアスと並べて初手バレパンダイフェアリーが多い。
バレパンのダイマゼルネアスへのダメージは1割程度。一般的な味方殴りダメージの範疇だと思う。
持ち物:もくたん
特性:ひでり
調整:HC252D4 冷静最遅
技:ふんか/ねっぷう/だいちのちから/ボディプレス
一般的なコータス。ゼルネアスが無理そうな時はトリルアタッカーになる。対カイオーガではクッション兼晴れ展開要員にも。
レジエレキ
持ち物:いのちのたま
特性:トランジスタ
調整:おくびょうCS252H4
技:10まんボルト/ライジングボルト/ボルトチェンジ/まもる
一般的なレジエレキ。選出画面で圧をかけて相手においかぜさせるのが主な役割。ゼルネアスが無理そうな時はニャオニクスと並べて初手てだすけダイサンダーもできる。
選出
基本:
先発 ゲンガー+ゼルネアス
後発 ニャオニクス+何か
対トリル:
先発 カポエラー+ゼルネアス
対鋼伝説:
先発 ゲンガー+カポエラー
後発 コータス+何か
初手ダイマエレキしか勝ち目がない:
先発 レジエレキ+ニャオニクス
後発 ゼルネアス+ゲンガーorカポエラー
戦績
ビギナー級ランク1からスタート。
25勝10敗で無事マスターボール級昇格。うちハイパーボール級で6敗。
マスターでは3勝6敗くらい。上のランクになるほど戦うのは厳しいが、マスター昇格ならなんとかなる。
感想:鹿スライダー
決まるととても楽しい。
ミストフィールド悪戯心自然の力弱保ゼルネアスの優先度1ムーンフォース、通称鹿スライダーです #ポケモン剣盾 #NintendoSwitch pic.twitter.com/wXJrYLeheY
— colon_pip (@SemColon) 2021年11月28日
しかしこの1回しか成功しなかった。どうしてこんなことに...
というのも、トリル下でのダイマゼルネの火力が圧倒的で、勝ち試合はトリル下で全員倒すか早めに降参されてしまう。
一方で負け試合はゼルネがすぐ落ちるか、壁やバクアで守りを固められるケースが多い。
「ゼルネの火力が削がれないまま相手がトリルを凌ぐ」という鹿スライダーが効果的な試合展開に全然ならなかったのだ。
聡明な読者の方々の中には、「そりゃそうでしょ」という感想を持たれた方も多いと思う。実際自分も使用して数戦でなんとなく気づいたが、どのくらい成立しないかも含めて使用&記事化するもの大切だと思っている。
感想:ゼルネトリパ
鹿スライダー以外の使用感想。
とても分かりやすい構築。相手のゼルネアス対策が「おいかぜで上を取る」「ゼルネへちょうはつ」の時は勝ち、「壁やバクア等で守りを固める」「固いダイマ鋼で殴る」だと負けた。
またランクや順位が高くなるほど守りを固める相手が多くなった印象。ダイマ環境だとデバフや壁が強いことを再認識した。
ちなみにザシアンは速いしダイマックスしないので特に苦手な印象は無い(得意でもない)。ザシアン入りによく入っているリザードンがダイマックスしてくれると楽で、ゼルネアスのダイサンダーで倒せる。
また致命的な欠点として、「フェアリーオーラが画面に表示されるせいで遅いのがバレる」があった。
相手トルネオーガ、こちらゲンガーゼルネアスであめふらしよりフェアリーオーラが後に表示される、かつ相手プレイヤーがそれを見逃さないと、トリルを警戒されてしまう。実際ハイパーボール級くらいからトリルの成功率が落ちた。
とはいえ、欠陥があれど刺さる相手には刺さって超火力で一気に試合を決められ、マスター昇格ぐらいはできる構築ではあった。Switchで録画した動画の数も非常に多く、使っていて楽しかった。