噴火・潮吹きの定理

ポケモン対戦をいかにシンプルにできるか

【習得技】とりポケモンがひこうタイプの全てではない【USM】

 

はじめに

 

 ポケモン金銀HGSSのジムリーダーに「ハヤト」がいる。

 

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 彼はひこうタイプのジムリーダーであり、かつ「とりつかい」を自称している。以下は金銀クリスタルでのキキョウジムでのハヤトのセリフの引用(参考:ポケモンwiki)である。

 

(対戦前)「おれが キキョウ ポケモンジム リーダーの ハヤト! せけん じゃ ひこうタイプの ポケモンなんか でんげきで いちころ…… そう とりポケモンを ばかにする おれは それが ゆるせない! おおぞらを かれいに まう とりポケモンの ほんとうの すごさ おもいしらせて やるよ!」

 

 

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 ハヤトのこのセリフに違和感を持った方もいるかもしれない。そう、

 

 「ひこうタイプ」の話がいつの間にか「とりポケモン」の話になっている。

 

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 ポケモンの世界には、とりポケモンではないひこうタイプも存在するのだ!

 

 まあハヤトはひこうタイプジムリーダーの中でもとりポケモン志向が強そうなので、とりポケモン以外のひこうタイプを採用しなくてもしょうがない面はある。

 しかしハヤトに限らずとも、ひこうタイプと言えばとりポケモン、というイメージは世代を問わず強いように見られる。ひこうタイプ専門のジムリーダーや四天王全員の初登場時の手持ちを見ると

 

ハヤト:ポッポ・ピジョン

ナギ:オオスバメペリッパーエアームドチルタリス

フウロココロモリケンホロウスワンナ

カヒリエアームドバルジーナクロバットオドリドリドデカバシ

 

 と、12/14がとりポケモンで占められている(残りはコウモリ)。

 

 この記事では、ややもすると忘れられがちな「とりポケモンではないひこうタイプ」のひこうタイプらしさについて考えていく。

 

 

「ひこうタイプらしさ」とは

 

 様々な観点から考察ができそう(モチーフの詳細な考察、3Dモデルの挙動の観察、スカイバトルの考察etc. )だが、今回はとりあえず「どんなひこうタイプの技を覚えるか」とした。その理由は、

 

定量なので議論がしやすそう

 

・タイプ一致技は威力1.5倍、ジム戦勝利後にそのジムのタイプの技マシンがもらえる、等ポケモンと技のタイプに深い関係が見られる*1

 

・「とりポケモンではないひこうタイプ」が共通して覚える技もあるかも

 

あたり。

 

 ひこうタイプのとりポケモン/とりではないポケモンについて、覚えるひこう技の数や傾向を見ていくことにする。

 

 今回の対象は最終進化系のみとした。ポケモン全てを1種類ずつだと2進化ポケモンの影響が大きく出てしまう。

 

 そして習得技は基本的にウルトラサンムーンの時点で確認する。剣盾では一部のひこうタイプが登場していなかったり(全ポケモン揃うソフトが欲しい...)、剣盾とUSMで習得ポケモンが結構違う技があったりする。

 

 剣盾初登場のひこうタイプは全て完全に鳥(アーマーガア族、ウッウ、ガラル3鳥)なので、今回は鳥ではないポケモンが多くいるUSMを中心に見てみたい。その後剣盾で気になった点も補足する。

 

 ちなみにひこう技の数はUSMで25種、剣盾で22種。ダブルウイングが追加され、オウムがえし・おしゃべり・くちばしキャノン・フリーフォールが削除された。

 

「とりポケモン」とは

 

 現実世界の鳥類と姿が似ているポケモンのことを指す。鳥類の特徴としては、

 

・羽毛がある

・翼を持ち飛ぶ

・卵生

・嘴がある

 

 等が挙げられる。このうち羽毛は表現上本当にあるのか分かりづらいため、卵生はポケモンのほとんどに当てはまってしまうため、とりあえず今回は

 

・翼を持ち飛ぶ

・嘴がある

 

 の2点を満たすポケモンをとりポケモンとした。

 

 

誰がとりポケモンで、誰がとりポケモンではないのか

 

 ここからは、とりポケモンか否かの具体例を見ていく。

 

とりポケモン(翼も嘴もある)

 

 ピジョットオニドリルカモネギドードリオフリーザー・サンダー・ファイヤー(ガラル含む)、ヨルノズクネイティオデリバードエアームド、ホウオウ、オオスバメペリッパーチルタリスムクホークドンカラスペラップケンホロウスワンナウォーグルバルジーナファイアロージュナイパードデカバシオドリドリ、アーマーガア、ウッウ

 

 このカテゴリのポケモンいわゆる「とりポケモン。全て鳥がモチーフになっており、ひこうタイプ専門のトレーナーが良く使用したり、ひこうタイプのイメージの中心を担っていたりする。

 

 ドードリオは「翼の無い鳥」がモチーフなので、例外的にとりポケモン扱いとした。ジュナイパーは元々ひこうタイプだったポケモンの最終進化系なので参加とした。後述のハッサムも同様。

 

 

とりポケモンかもしれない(翼はある)

 

 リザードンバタフリープテラカイリューレディアンクロバットハッサム、ルギア、アゲハントアメモーステッカニンボーマンダガーメイルビークイントゲキッスメガヤンマグライオンココロモリシンボラーアーケオスエモンガトルネロスビビヨンルチャブルオンバーンイベルタル

 

 "とり"なのかどうか迷ったポケモンは実際多い(イベルタルルチャブルの口元は嘴なのか?プテラアーケオスは鳥と言えるのか?トルネロスはどう扱えばよい?トゲキッスくんは一体何者なんだ??)。

 

 これらを1つ1つ深追いするのはこの記事の趣旨ではないし、下手をするといわゆるインドぞう*2メリケンサック*3になりかねない。

 

 そのため、判断に迷うポケモンは1つのカテゴリで大雑把に扱うこととした。

 

 虫ポケモンもここに該当。「虫は鳥ではない」という考えも当然あるが、翼(翅)を持って飛ぶので今回は「とりポケモンかもしれない」扱いとした。

 

 実際問題として、てんとう虫やトンボと翼のある怪獣、さらには「鏡に映すと鳥のような何かにも見える風神」のどれが最も鳥っぽいかを判断するのは極めて困難だと思う。

 

 

とりポケモンではない(翼も嘴もない)

 

 ギャラドスワタッコマンタイントロピウスレックウザ、フワライド、スピンロトム、スカイシェイミアルセウスボルトロスランドロスシルヴァディメテノテッカグヤ

 

 翼も嘴も無い、さすがに鳥と言うには無理のありそうなポケモンのカテゴリ。ボルトロスランドロスは鏡でも鳥には見えないので、トルネロスとは異なりこのカテゴリ。アルセウスシルヴァディ等のタイプチェンジ系ポケモンも参加。

 

 実際、植物魚類怪獣神様無機物もおりバリエーションは豊か。全員なんらかの能力を使って飛べそうだが(シルヴァディは怪しいか)、他に共通点はあるのだろうか?

 

 次から習得技を見ていく。

 

ウルトラサンムーンでの全体の傾向

 

 全ひこうポケモンが覚えるひこう技について、ヒストグラムは以下の通り。

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 ひこう技の個数が10個および7個ポケモンのところにピークがあり、2~4個くらい覚えるポケモンもある程度いる、といった感じ。

 

 これを各カテゴリごとに比較するとこんな感じ。

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 「とり」「とりかもしれない」「とりではない」で見事に分布が3つに分かれた

 "翼や嘴が無いとひこう技のレパートリーは狭くなる"というイメージは自分もなんとなく持ってはいたが、実際に数字にしてみると予想よりも顕著な違いとして現れた。

 

とりではないポケモン

 

 ここからは、とりではないポケモンたちのひこう技を具体的に見ていく。ひこう技は全部で25種。

 

7~8個覚えるポケモン

 

マンタイン:アクロバットエアスラッシュ、おいかぜ、きりばらいつばさでうつ、つばめがえし、とびはねる、はねやすめ (8)

トロピウスエアスラッシュ、おいかぜ、かぜおこし、きりばらいそらをとぶ、つばめがえし、はねやすめ (7)

レックウザエアスラッシュ、おいかぜ、ガリョウテンセイきりばらいそらをとぶ、つばめがえし、フリーフォール (7)

 

 当然のように「つばさでうつ」を覚えるマンタインの異様さが際立つ。モチーフはエイであり、鳥ではない。図鑑説明にも「海面から飛び出す」「滑空する」「鳥ポケモンと見間違う」等の記載は多いが「翼」だとは一言も書かれていない。

 

 理由は全く不明だが、ゲーム内ではあれが翼だということになっているらしい。

 

 トロピウスレックウザ大型で空を自由に移動するが、移動手段が翼そのものではないポケモンレックウザは特性や専用技でひこうタイプのイメージがかなり強いので、このカテゴリにいること自体が意外ではある。

 

 

4~5個覚えるポケモン

フワライド:アクロバット、おいかぜ、かぜおこしきりばらいそらをとぶ (5)

シルヴァディエアスラッシュ、おいかぜ、きりばらい、つばめがえし(マルチアタック) (4)

 

 シルヴァディはマルチアタックを入れれば5個。フワライドがエアスラッシュではなくかぜおこしなのが非常に特徴的。剣盾で特殊ダイジェットフワライドのためにかぜおこしを採用した構築も存在する。

 

 

1~3個覚えるポケモン

ワタッコ:アクロバット、つばめがえし、とびはねる (3)

ボルトロスきりばらいそらをとぶ、フリーフォール (3)

テッカグヤ:アクロバットエアスラッシュそらをとぶ (3)

アルセウス:おいかぜ、きりばらい(さばきのつぶて) (2)

ギャラドス:とびはねる、ぼうふう (2)

スピンロトムエアスラッシュきりばらい (2)

スカイシェイミエアスラッシュ、おいかぜ (2)

ランドロスきりばらいそらをとぶ (2)

メテノ:アクロバット (1)

 

 アルセウスはさばきのつぶてを入れれば3個。フォルムチェンジ等でひこうタイプになったポケモンは、とりではないポケモンの中でもひこう技が少なめ。

 

 特にボルトロスランドロスは、対になる準伝説であるトルネロス(ひこう単タイプ)をひこうタイプとして際立たせるために技種類が絞られている印象がある。

 

 そして今回最もひこう技が少ない、ひこうタイプっぽくないポケモンメテノとなった。唯一覚える技はクロバット

 

 

ひこう特殊技について

 ここまでで一番気になるのがフワライドのかぜおこし。同じく風を操る技でありながら、より威力が高く実践的なエアスラッシュやぼうふうは習得できていない。他のポケモンはどうだろう?

 

エアスラッシュ習得マンタイントロピウスレックウザシルヴァディテッカグヤスピンロトム、スカイシェイミ

ぼうふう習得ギャラドス

どちらも習得せず:フワライド、ワタッコボルトロスアルセウスランドロスメテノ

 

 習得者は大柄なポケモンかフォルムチェンジ系といった印象。一方習得しないポケモンは、そもそもひこう技のレパートリーをを抑えられているポケモンを除くと、皆小さそう

 

 特殊なポケモンを除いた各ポケモンのたかさ・おもさは以下の通り。

 

ポケモン たかさ(m) おもさ(kg)
マンタイン 2.1 220
トロピウス 2 100
レックウザ 7 206.5
テッカグヤ 9.2 999.9
ギャラドス 6.5 235
フワライド 1.2 15
ワタッコ 0.8 3
メテノ 0.3 40

 

 習得組はみな2m以上で100kg以上(一番小さいのがトロピウス)、一方で非習得組は1.2m以下で40kg以下。体格にかなりの差がある。

 

 理由としては、体格が小さいと風をおこすというよりは吹き飛ばされるのではないだろうか。図鑑説明では、ワタッコは「季節風に流される」、フワライドは「行き先を決められない」とある(メテノは明確な描写なし)。

 

 とりではないひこうタイプは、大柄(あるいはフォルムチェンジ系)でないとひこう特殊の大技を習得できないことがわかった。

 

 

ひこう物理技について

 

 それでは小さいポケモンはどうなるのか?メテノクロバットが顕著だが、「空中をすばしっこく動いて攻撃」という技なら鳥でなく小さくても覚えられる(そして性質上どうしても物理技になりがち)。

 

 またワタッコ(とギャラドス)が覚える「とびはねる」も特徴的。ウルトラサンムーン時点では65体の最終進化系が習得するが、その中でひこうタイプは6体と際立って少ない。

 

 内訳はギャラドスワタッコデリバードマンタインアーケオスルチャブルの6体。この記事で完全なとりポケモンと定義したポケモンは全く入っていない。

 

 ジャンプをする攻撃が、とりポケモンには無いひこうタイプの特徴だと言える。

 

 とりではないポケモンについてここまでをまとめると、

 

・大柄ならその体格を生かして激しい風をおこし、

・小柄なら素早い動きやジャンプ攻撃で物理で攻める

・フォルムチェンジ等固有の事情で技が決まることもある

 

 のが特徴で、

 

・例外的な立ち位置にマンタインがいる

 

 ことが分かった。

 

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とりではないひこうポケモンらしく夜空へとびはねるワタッコ

 

これ以降は他のカテゴリのポケモン、および剣盾についてチェックする。

 

とりかもしれないポケモン

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 間隔が空いたので同じグラフを再掲。

 

 ひこう技の個数最多はクロバットオンバーンの12個。同じこうもりポケモンココロモリも10個と多め。クロバットブレイブバードを習得したり、フウロカヒリが所持していたりとこうもりは非常にひこうタイプ要素が強いカテゴリに設定されている。

 

 一方最少はテッカニンボーマンダの4個。特にテッカニンはUSMではかなり珍しい「翼や翅があるのにおいかぜを覚えないひこうタイプ」で、他にはなんとなくペンギンに似ているデリバードしかいない。まぁこれ以上速くなっても...

 

 ボーマンダはXY~USMはメガシンカ、剣盾はダイジェットがあるのでひこう技に困っている印象が薄いが、BW2以前は大変だったはず。

 

 

とりポケモン

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 間隔が空いたので同じグラフを再掲。

 

 全ひこうタイプの中で、ひこう技を最も器用に使いこなすのはカモネギスワンナで、25種中14種を覚える。どちらもひこうタイプでも意外に習得者が多くない技(エアカッター(習得者16体)・フェザーダンス(15体)・ブレイブバード(14体)など)をしっかり習得していた。

 

 最も少ないのはデリバードで6種。ただ、もともと習得技がプレゼント特化だったりする等特殊なポケモンではある。

 

 デリバードを除いたひこう技実質最少のポケモンは、なんとファイアローで8種。ストーリー序盤に出現する鳥ポケモンの進化系というポケモンで最も鳥っぽいポケモンだった。

 

 最も、XYをプレイしたことのある人なら予想はできたかもしれない(筆者は未経験)。XYのヤヤコマが10レベルのつつく、次のひこう技がファイアロー42レベルのアクロバット(と基本技のブレイブバード)。自力習得の飛行技が少なく技マシンを活用した人がかなり多かったらしい。

 

剣盾でどうなったか

 

 以下の傾向はUSMの時と変化なし。

 

・「とり」「とりかもしれない」「とりではない」の3カテゴリで習得する技の数が大きく異なる

・フワライドの特殊技はかぜおこしのみ

・ひこう技トップの座はカモネギ(通常)のまま

 

 新技ダブルウイングは習得者が面白く、翼のような器官を持つポケモンが片っ端から習得した(ピクシーとかも)。

 

 今回のカテゴリ分けともかなり合致し、「とり」「とりかもしれない」(翼がある)はトルネロス以外全員習得し、「とりではない」はマンタイン以外全員習得しなかった。マンタイン何なんだ...

 

 

 新ポケモン5体(アーマーガア、ウッウ、ガラル3鳥)は全員鳥だが、しいて言えばガラルサンダーがややとりっぽくない(飛べない設定)。

 

 が、エアスラッシュを5体で唯一覚えない代わりにクロバットやとびはねるを唯一覚えるなど、とりっぽくないひこう技の習得で数を稼ぎ(8種)、結果的にガラルフリーザーの7種を上回っている。

 

 

まとめ

 

 とりポケモンではないひこうタイプのポケモンについて、習得する技から見た特徴は、

 

大柄で自ら風を起こして攻撃するポケモン

小柄で空中を機敏に動いたりジャンプしたりするポケモン

・フォルムチェンジ等固有の事情で技レパートリーが決まるポケモン

 

の3種に分類されることが分かった。

 

 これまで本編で印象が薄かった「とりポケモンではないひこうタイプ」についてある程度まとめることできた。もし第9世代で新たにとりではないひこうタイプが登場するのであれば、大きな体格で暴風を巻き起こすのか、小柄ですばしっこく動くのか、あるいは新しいパターンなのか楽しみである。

 

 ...マンタインのように鰭か何かが何故か翼扱いされているかもしれない。

 

 

*1:なぜ金銀のキキョウジムの技マシンはどろかけなのかという議論はここでは扱わない

*2:ライチュウやゴースの初代ポケモンずかんに登場する生き物。転じて、ポケモン考察において不必要に難解な考察にはまってしまうこと。

*3:水御三家全員のモチーフを武器とする説のこと。メリケンサックはオーダイルのモチーフとされる。転じて、根拠が曖昧な説を提唱すること。