前置き
アマージョのフェイント。
アローラでダブルバトルをしていたプレイヤーなら記憶に残っていると思う。特性じょおうのいげんと合わせて、相手のねこだまし・まもる・ワイドガードといった妨害技を無効化、隣の追い風エースやトリルエースの技を通す。アマージョにしかできない個性である。
ところが剣盾ではなんと習得せず。残念がったアマージョファンや対戦勢は後を絶たない。
ここでなぜ剣盾で習得できなかったのか、というか逆にアローラではなぜ習得できていたのか気になったので確認してみた。その結果、
アローラではキノガッサからだけ遺伝するタマゴ技だった。
遺伝経路のキノガッサがガラルにいなかっただけなのでは??
もちろん、「そのポケモンに欠かせない技」は遺伝経路が途切れても通常技として転生することもある(コータスのふんか等)。アマージョのフェイントはそうではなく、意図的にタマゴ技から除かれた可能性もある。
ただ一方で、単に繋がらないという理由だけで覚えない可能性も残る。この場合は、次回作スカーレット・バイオレットではキノガッサが存在するため遺伝経路が再び繋がる。これならフェイントが復活しそう(と筆者は思う)。
...ここまで考えると、アマージョ以外がどうなっているのかも気になる。
この記事では、「剣盾で習得できなくなったタマゴ技」を確認して、どういう経緯で覚えられないのかを観察・分類した。
対象となる技とその数
・前作USMではタマゴ技として覚えていたのに、
・剣盾ではタマゴ技から除外されている技で、
・技自体が剣盾で消滅した(例:たがやす)訳ではない
ものをチェックした。
以下のサイトを参照に、タマゴ技のあるポケモン全てを目視で確認した。
その結果、76の系統(進化前後あわせて1とカウント)で、のべ96個の技が剣盾でタマゴ技からなくなっていることが確認された。
ここから分類に入っていく。
分類紹介
1:単純にナーフされた可能性が高い
このグループでは、剣盾でも遺伝経路がつながっており、タマゴ技にしようと思えばできるのに削除されたものを分類した。
例えば「ヨマワルのみちづれ」はUSMではゴースから遺伝でき、ガラルにも両方いるしゴースもみちづれを覚えるが、ヨマワルは覚えなくなった、というパターン。
合計18個ある。BWに多い。
ピッピ | はらだいこ |
ミニリュウ | くろいきり |
テッポウオ | なかまづくり |
ヨマワル | みちづれ |
カラナクシ | じわれ |
ヨーテリー | すなかけ |
ムンナ | バトンタッチ |
モグリュー | ロケットずつき |
ドッコラー | はっけい |
メグロコ | くろいまなざし |
プロトーガ | じたばた |
ユニラン | ナイトヘッド |
ペロッパフ | はらだいこ |
マーイーカ | パワーシェア |
モクロー | のろい |
イワンコ | ふいうち |
イワンコ | ブレイククロ― |
シズクモ | オーロラビーム |
ピックアップ:
USMではウパー→ミニリュウで遺伝。なおしろいきりもウパー→ミニリュウで遺伝し、こちらは剣盾でも遺伝技として残っている。白と黒にそこまで大きな違いが...?
・ピッピ、ペロッパフのはらだいこ
USMではニョロモ→マリル→ピッピ・ペロッパフで遺伝。剣盾ではマリルまでは繋がっている。
ORASのピッピの図鑑説明文に「満月の 夜は 元気 いっぱいに 遊ぶ。 明け方 疲れた ピッピたちは 静かな 山奥で 仲間たちと 寄り添って 眠る。」とあり腹太鼓をしている可能性があったが、ガラルでは違うかもしれない。
2:教え技が遺伝に絡む
教え技が遺伝に絡むパターン。
例えば「ケーシィのはたきおとす」は、USMではタマゴ技としてケーシィ族を除いて11の系統から遺伝することができ、また自分で教え技として覚えることもできた。
しかし剣盾で教え技からはたきおとすが除外。同時にタマゴ技としても覚えなくなった、というもの。
タマゴ技として残っていると、教え技で覚えた過去作産のポケモンを持っている方が遺伝が楽で有利になってしまう。格差を小さくするための措置とも解釈できる。
一応剣盾で自力習得組のワンリキーとヤミラミから遺伝経路は繋がっているが、そのあたりはほぼ考慮されない。
全部で25個。
ピッピ | ものまね |
ヒトカゲ | エアカッター |
ピッピ | ほしがる |
ケーシィ | はたきおとす |
カモネギ | どろかけ |
ラッキー | カウンター |
ラッキー | いやしのすず |
ガルーラ | きあいパンチ |
カビゴン | おさきにどうぞ |
ホーホー | ゴッドバード |
チョンチー | でんげきは |
ツボツボ | どろかけ |
ヘラクロス | きあいパンチ |
ジグザグマ | どろかけ |
タブンネ | いやしのすず |
オタマロ | おさきにどうぞ |
チラーミィ | どろかけ |
バニプッチ | みずのはどう |
タマゲタケ | いえき |
テッシード | なやみのたね |
チョボマキ | どろかけ |
マッギョ | でんげきは |
メラルバ | でんじふゆう |
アマルス | でんじふゆう |
ヤトウモリ | はたきおとす |
ピックアップ:
・ケーシィのはたきおとす
再登場。はたきおとすがケーシィのタマゴ技になったのはRS、教え技になったのはBW2で教え技が後。タマゴ技の遺伝設定をわざわざ消すようなことはBW2当時はしなかったため、BW2~USMまで両立という一見変な状態にあった。
・チラーミィのどろかけ
ケーシィのはたきおとすの逆で教え技が先のパターン。どろかけはプラチナとHGSSまでの教え技でBWで消えたが、チラーミィはBWの新ポケモン。救済措置的にタマゴ技に追加されたと思われる。
・ヒトカゲのエアカッター
プラチナとHGSSの教え技で覚えたポケモン(リザードン・カイリュー・チルット系・トロピウス・ボーマンダ系。誰も自力習得はしない)からしか遺伝できないというレア技。
なおタマゴ技にはXYから追加され、ヒトカゲとリザードはこのタイミングで新規習得した。話がややこしすぎる。
3:過去の技マシンが遺伝に絡むパターン
2の教え技が過去作限定技マシンになったもの。
計4個。
タマタマ | しぜんのちから |
カビゴン | グロウパンチ |
ミミロル | グロウパンチ |
ボクレー | グロウパンチ |
4:進化時限定になったパターン
進化後が自力習得し、タマゴ技として進化前ポケモンも覚えていたが、剣盾から進化後の特典みたいな扱いになった技。
計3個。
サンド | ブレイククロ― |
サンド(アローラ) | つららおとし |
リオル | コメットパンチ |
ピックアップ:
・リオルのコメットパンチ
タマゴ技に追加されたのはなんとUSMからだった。儚い運命...
5:遺伝経路が途切れたパターン
冒頭のアマージョのフェイントと同じ、遺伝経路の途中のポケモンがガラルにいなかったパターン。パルデアでは遺伝経路がつながっていてほしい。
合計18個。
ガーディ | もえつきる |
ケーシィ | サイコシフト |
ケーシィ | パワートリック |
ワンリキー | パワートリック |
ブビィ | はらだいこ |
ヤミラミ | つきのひかり |
クチート | どくどくのキバ |
リオル | このゆびとまれ |
グレッグル | つぼをつく |
ダンゴロ | ロックオン |
バチュル | かなしばり |
ヒトモシ | ようかいえき |
クイタラン | まきつく |
メラルバ | あさのひざし |
マーイーカ | おだてる |
クレッフィ | ロックオン |
アシマリ | アロマミスト |
アマカジ | フェイント |
ピックアップ:
・ワンリキーのパワートリック
USMではアサナン→ワンリキーで遺伝。そんなトリッキーなイメージはワンリキーに無かったが...
・リオルのこのゆびとまれ
剣盾で覚えなくなった代表例みたいな技。USMではオタチ→リオルで遺伝。果たしてパルデアにオタチはいるのか。
・アシマリのアロマミスト
USMではドーブル→アシマリで遺伝。「陸上グループのタマゴ技はドーブルでOK」とはUSMまでよく言われたが、何もドーブルからしか遺伝できない技を作らなくてもいいのでは。
6:遺伝経路が途切れたパターン・ダウンロードコンテンツ編
ダウンロードコンテンツ絡みで遺伝経路が途切れたケース。
例えばマーイーカのシンプルビームはUSMではコダックからの遺伝だったが、コダックは鎧の孤島からガラルにやってきたポケモン。DLC発売前はマーイーカへの遺伝経路がつながっていない。
そして鎧の孤島発売後も遺伝技として復帰することはなく現在に至る。一見遺伝経路がつながっているように見えても繋がっていないのだ。
マーイーカは鎧の孤島のケースだったが、もちろん冠の雪原でも同じことが起きうる。
全部で19個。
フシギダネ | ヘドロこうげき |
シェルダー | とっしん |
シェルダー | こうそくスピン |
クラブ | くすぐる |
トサキント | ロケットずつき |
バリヤード | いやしのねがい |
カビゴン | ふきとばし |
ホーホー | くろいまなざし |
ネイティ | くろいきり |
サニーゴ | ねをはる |
スコルピ | ポイズンテール |
バニプッチ | こなゆき |
カブルモ | つのでつく |
マーイーカ | シンプルビーム |
カメテテ | くすぐる |
ヌメラ | とける |
ヌメラ | ポイズンテール |
オンバット | すりかえ |
モクロー | くろいきり |
モクロー | のろい |
ヌイコグマ | ワイドガード |
ピックアップ:
・フシギダネのヘドロこうげき
ドガースなど→カラナクシ→ミズゴロウ→フシギダネという、実用性のわりに長大な遺伝経路を誇っていた技。途中にいるミズゴロウまでは繋がっているが、ミズゴロウが冠の雪原から登場のため、鎧の孤島から登場のフシギダネには間に合わなかった。
今後はこういう長大な遺伝経路は少なくなりそう。
・クラブのくすぐる
自分が正しければチラーミィなど→ピカチュウ→マリル→オムナイト→クラブという経路。長い。途中のオムナイトが冠の雪原登場で切れている。
ただしクラブと同じタマゴグループ水中3のメノクラゲは、くすぐるをオムナイトから遺伝する。メノクラゲは鎧の孤島から登場なので経路は切れていてもおかしくないはず、謎。
・スコルピのポイズンテール
USMではフシデ(鎧の孤島で登場)からの遺伝。あの姿形でポイズンテール覚えないのか...
・バニプッチのこなゆき
USMではユキワラシ(冠の雪原で登場)からの遺伝。あの姿形でこなゆき覚えないのか...
・カブルモのつのでつく
USMではヘラクロス(鎧の孤島で登場)からの遺伝。あの姿形でつのでつく覚えないのか...
・ヌメラのとける、ポイズンテール
USMではとけるはブルンゲル→カラナクシ→クズモー→ヌメラ、ポイズンテールはクズモー→ヌメラ。この中でクズモーだけが鎧の孤島から登場、他は剣盾初期メンバー。
技が1体で2個つながっていない珍しいケース。
7:遺伝経路が途切れたパターン・剣盾新要素が考慮されなかった編
例えばホエルコのクリアスモッグは、USMまではドガース→トリトドン→コダック→ホエルコと遺伝。コダックが鎧の孤島から登場のため途切れている。
が、おなじ陸上グループのコータスが剣盾からレベルでクリアスモッグを習得(それまではタマゴ技)。剣盾新要素によって遺伝経路が繋ぎなおせる状況にはあったが、反映されなかった。
このパターンは、ポケモンによって繋ぎなおしがあったりなかったりするのでややこしい。
全部で8個。
クラブ | くろいきり |
サイホーン | ブレイククロ― |
ガルーラ | ブレイククロ― |
ニューラ | ブレイククロ― |
キモリ | ブレイククロ― |
ホエルコ | クリアスモッグ |
クリムガン | ブレイククロ― |
クチート | メタルバースト |
ピックアップ:
・クラブのくろいきり
USMではウパー→オムナイト→クラブ、オムナイトが冠の雪原登場のため途切れている。
一方剣盾ではウパー→ガラルサニーゴ→クラブがつながるがこれは考慮されず。
だが同じ水中3のウパー→ガラルサニーゴ→メノクラゲは繋がっている。くすぐるでも似たようなことがあった、メノクラゲ一体何なんだ?
・クチートのメタルバースト
USMではサンドパン→クチート遺伝だが、サンドパンが鎧の孤島から登場したためつながらず。剣盾ではニャイキングが習得するが、これもクチートには繋がらなかった。
ただし同じタマゴグループ陸上のサイホーンはニャイキングからしっかり遺伝。剣盾だとただでさえクチート厳しいのでメタルバーストを配っても良かったのでは...
BDSPでは?
ここまでずっと剣盾のタマゴ技を見てきたが、より新しい作品であるBDSPだとどうだろうか。登場ポケモンの変更があるため、剣盾では遺伝経路が途切れている状態でも再び繋がっている可能性がある。
そのため追加の確認として、第4世代までに登場したポケモンについて、剣盾でタマゴ技ではなくなった技がタマゴ技として復活しているか確認した。
ここで遺伝経路の繋ぎなおしが確認できれば、新作のスカーレット・バイオレットでも繋ぎなおしの希望が持てる。
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その結果...
「遺伝経路が途切れた」パターンのみならず、「教え技絡み」パターンも、「単なるナーフ」パターンも含めて、
「カビゴンのグロウパンチ」以外の全ての遺伝技が復活していた!
...こうなった詳細はおそらく以下の通りである。
BDSPでは地下大洞窟で遺伝技を覚えたポケモンが出現する。あのヒトカゲのエアカッターのような遺伝経路が滅茶苦茶な技でも、USMまでのタマゴ技ならとりあえず全て野生で出現してしまう。
剣盾のマックスレイドや野生のオーラポケモンでも似た仕様があるが、BDSPはUSMのタマゴ技をベースにしているので範囲がかなり広い。
一方カビゴンのグロウパンチは、USMで追加されたカビゴンのみのタマゴ技。カビゴンは孵化時のまんぷくおこうの有無でカビゴンまたはゴンべが生まれるが、7世代ではグロウパンチはカビゴンを孵化したときにしか遺伝しない。
そして地下大洞窟には、ゴンべが出現するがカビゴンは出現しない。そのためカビゴンのグロウパンチのみが復活から外されることとなった、と思われる。
以上のことから、BDSPでは、USM時点で決められたタマゴ技(カビゴン以外)機械的に復元しており、剣盾での再調整や遺伝経路の消失とは関係が無さそうだということが分かった。新作のタマゴ技事情の参考にはならないが、色々な技を使いたい人にとっては良い環境に思われる。
まとめ
剣盾で消えたタマゴ技には、単なるナーフの他にも教え技関係や遺伝経路の消失など、様々な要因が絡んできそうなケースがあることが分かった。新作のスカーレット・バイオレットでどうなるかまでは予想できなかったのは残念。
個人的には願わくばBDSPのように、とりあえず全て野生で出す、という方針にしてくれると色々なことができて助かる。技術的には複雑になる一方で開発者は大変ではあるのだが...